自作問題の解答と解説(たまに科学に関するブログ)

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化学 問題No.3の解答&解説

※ここは私がツイッターにて出した問題の回答を公開している場所です。まだ問題解いてないよ~っていう人は私のツイッターをご覧ください
私のアカウント→https://twitter.com/bot75098033

 

 今回の問題はセンター化学の問題を元に作成しました。なので、ちょうど受験勉強していて、解いたことがあるという人もいると思いますので、簡単だったと思います。なので、ちょっとだけ変えて、難易度を上げてみました。とはいってもやはり、簡単だったと思いますが...でも、まだ解いたことなかったり、解いたことがあったけど忘れちゃったり、なんだかんだ言ってできなかった人もいると思いますので、解説していきます。

 

 

解説の前に問題と解答を公開します。

解答

[#化学] #問題 No.3 アニリントルエン、フェノール、安息香酸の混合物を分離するために、以下のような操作手順で行った。この時、上層C、下層D、上層Eを答えよ。また、フェノールがサリチル酸であっても分離を出来るかを答えよ。 2017年センター化学・追を参考にして作成。答えは違うので解説有

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https://twitter.com/bot75098033/status/1394925794569359366

  という問題でしたね。そして前者の答えは

上層C・・・トルエン

下層D・・・アニリン(本当はアニリン塩酸塩ですが、大学受験レベルであれば、アニリンが正解のため、アニリンが正解になります。アニリン塩酸塩と答えた方は、自己判断で、正解か不正解か決めてください。)

上層E・・・フェノール(残った安息香酸が下層Fとなります。また、その時はアニリンのように、安息香酸ナトリウムとなりますが、もし、問題として出した場合、安息香酸が答えとなります。)

で、後者の答えは

出来ない

となります。

解説

 さて、解説に入ります。まずそれぞれの化合物の構造と今回必要なそれぞれの性質を見ていきましょう。

アニリン

アニリンは水に溶けにくいが、弱塩基性を示す物質です。そのため、酸性の物質とよく反応します

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アニリン

トルエン

トルエンは水に溶けないため、酸性物質や塩基性物質とほとんど反応しません

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トルエン

フェノール

フェノールは水に溶けにくいが、弱酸性を示す物質です。なので、塩基性物質とよく反応します

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フェノール

安息香酸

安息香酸は水に溶けにくいが、弱酸性を示す物質です。なので、塩基性物質とよく反応します

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安息香酸

また、酸性度の大きさ(酸性としての強さ)は安息香酸>炭酸>フェノールである。

次に操作ごとに見ていきます。では、操作Ⅰから見ていきましょう。

操作1 分液漏斗に混合物のジエチルエーテル溶液と水酸化ナトリウム水溶液をいれて、よく振り混ぜた後に、上層Aと下層Bにわかれた。次に、下層Bのみ取り除いた。」

つまり、混合物に塩基性物質(水酸化ナトリウム水溶液)を混ぜたことになり、また、水にはその塩基性物質と塩基性物質と反応してできた塩は溶けるが、ジエチルエーテルには溶けず、水とジエチルエーテルは溶けないので、塩基性物質と反応する物質を先ほど記述したそれぞれの性質から探すことによって、どの物質が水に溶けて分離したのかがわかります。今回の場合、フェノールと安息香酸ですよね。また、水とジエチルエーテルでは水の方が、比重が大きいので、水に溶けた物質、すなわち、フェノールと安息香酸が下層Bとなります。そして残ったアニリントルエンが、上層Aとなります。

 では、操作2を見ていきましょう。

操作2 操作1にて残した上層Aに十分な量の塩酸を加え、よく振り混ぜた。その後、上層Cと下層Dに分かれた。」

 つまり、上層Aに酸性物質(塩酸)を混ぜたことになり、また、水にはその酸性物質と酸性物質と反応してできた塩は溶けるが、ジエチルエーテルには溶けず、水とジエチルエーテルは溶けないため、酸性物質と反応する物質を先ほど記述したそれぞれの性質から探すことによって、どの物質が水に溶けて分離したのかがわかります。今回の場合、既に上層Aにはアニリントルエンしかなくて、また、酸性物質と反応するのはアニリンです。なので、水に溶けているのはアニリンとなり、水とジエチルエーテルでは水の方が、比重が大きいので、下層Dがアニリンで、残ったトルエンが上層Cとなります。

 では、操作3を見ていきましょう。

 「操作3 操作1にて取り除いた下層Bに塩酸を加え、弱酸性になったことを確認した後、十分な量のNaHCO水溶液を加え、振り混ぜた。その後、上層Eと下層Fに分かれた。」

 ここで思い出してほしいワードがあります。それが弱酸の遊離です。

 ではその弱酸の遊離というのはどういうことかと言いますと、ざっくりというと、

「弱い酸と塩基で出来た塩にその弱い酸よりも強い酸を加えることによって、その弱い酸は塩基から離れ、その離れた塩基と弱い酸よりも強い酸と結合して、塩を形成する」

というものです。まぁ一言でいえば不倫です

  なぜ遊離するのかっていうのは解説が終わったら説明しますが、とりあえず、今回の場合、どのように弱酸の遊離が動くか説明します。

 まず、確認すべきことは下層Bはなんなのかっていう話ですよね。下層Bはフェノール(ナトリウムフェノキシド)と安息香酸(安息香酸ナトリウム)でしたね。これを弱酸性にしてと言いますが、ここで弱酸の遊離が起きています。塩酸は強酸で、フェノールと安息香酸は弱酸でしたね?つまり、塩酸を加えることによって、弱酸の遊離が置きます。よって、フェノールや安息香酸からナトリウムが離れて、フェノールや安息香酸はそのままでは水に溶けにくいため、そのまま水から出てきます。

 ここで、NaHCOを加えるわけですね。ここが重要となります。ではまず、NaHCOはどんな塩なのか...これは、炭酸と水酸化ナトリウムの塩となります。

...あれ?そういえば、先ほど私は炭酸も含めた酸の強さの大小関係を記述したはずですよね...確か

安息香酸>炭酸>フェノール

でしたね?つまり、炭酸よりも安息香酸の方が強い酸ということは、弱酸の遊離が起きるので、炭酸からナトリウムが離れて、安息香酸にナトリウムくっつき、安息香酸ナトリウムになります。しかし、フェノールの場合は、炭酸よりも酸が弱いので、弱酸の遊離が起きないです。なので、フェノールはフェノールのままです。また、水の方が比重が大きいです。なので、上層Eがフェノール(ちなみにフェノールは常温では固体なので、正確には液体ではありません。ちなみに安息香酸同じく。)となり残った下層Fが安息香酸となります。

よって、答えは

上層C・・・トルエン

下層D・・・アニリン

上層E・・・フェノール

です。

 

 そして、もしフェノールをサリチル酸に変えても可能かっていう話ですが、これに関しては、一見サリチル酸を見て下さればわかると思いますが、フェノールと同じ、ヒドロキシ基(ーOH)がありますよね。なので同じように見えますが、よく見てみると、安息香酸と同じ、カルボキシ基(ーCOOH)がありますね。なので、サリチル酸はフェノールよりも強い弱酸で、尚且つ、炭酸よりも強い酸です。

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サリチル酸

 つまり操作1で無事、分離出来ても、NaHCOでは弱酸の遊離が出来てしまうため、安息香酸と混ざったままなので、分離が出来ません。よって、出来ないが答えとなります。

 因みに今気づきましたが、作ってる方では、NaHCOの3は下の方に小さめに移ってますが、サイトで見る時は浮いちゃってるんですね...そのうち改善します。

 

なぜ弱酸の遊離は起こるのか?

弱酸・弱塩基の遊離がなぜ起きるのか - 自作問題の解答と解説(たまに科学に関するブログ)

コラム

 さて、今回出てきたサリチル酸に関してですが、風邪薬に使われているのは聞いたことがあります。しかし、このサリチル酸についてですが、弱酸といっても胃にとって、酸として強いということが問題となっています。このままでは、胃によろしくないです。

 そこで、人類は考えた...「ヒドロキシ基をアセチル化して、アセチルサリチル酸にしたら酸としての強さを弱められるのでは?」。そう思ってアセチル化してみた結果、なんと酸としての強さを弱めることが出来ました!ではなぜなのか...

 それは、酸が強いっていうのは水素との電離度が関係していて、水素を離す確率が大きいと酸が強いです。ではアセチルサリチル酸はどうか...実はアセチルサリチル酸自体には分子内水素結合っていうのがカルボキシ基とアセチル基の間で起きています。その水素はカルボキシ基のほうにありますが、その水素が離れることによって、酸性を示します。しかし、水素結合しているときと、水素結合していないときでは、水素結合している時の方がエネルギー的に安定します。つまり、アセチルサリチル酸から水素がサリチル酸の時よりも電離しにくくなっています。なので、酸としての強さを弱めることが出来ました。

 こうして、アセチルサリチル酸アスピリン)は風邪薬として登場することが出来ました(今でもバファリンが取り扱っている)。が、アスピリン喘息があったりと、副作用が強いし、正直人によるけど、風邪薬はロキソプロフェンの方が優秀なのが現実...